関塾ひらく「インタビュー」 各界で活躍する著名人に教育や経営をテーマとしたお話を伺いました。
カトープレジャーグループ 代表取締役兼CEO 加藤 友康
スキー場から“非日常”を提供する世界のマウンテンリゾートへ
 

日本のスキー場が市場縮小と施設の老朽化に直面する中、インバウンド効果を背景に“リゾート化”を軸にした大胆な改革を展開する白馬。その中心人物が、白馬地域に3つのスキー場でリフトやゴンドラを運営する白馬観光開発株式会社の和田寛社長です。東大卒業後、農林水産省・外資系戦略コンサルティング会社を経て、斜陽産業といわれるスキー業界に飛び込んだ和田社長に、お話をうかがいました。。

Profile

1976年生まれ。東京大学法学部を卒業後、農林水産省に入省。その後アメリカの大学でMBAを取得し、外資系戦略コンサルティングファーム「ベイン・アンド・カンパニー」に転職。2014年、「白馬観光開発」の親会社である「日本スキー場開発」に入社。2017年より白馬観光開発株式会社の代表に就任。
新緑に紅葉、雪景まで四季折々の北アルプスを一望できる
「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」の絶景テラス

緑に紅葉、雪景まで四季折々の北アルプスを一望できる
「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」の絶景テラス


■慣れ親しんだ美しい自然を次世代に残したい

ーー大学卒業後、農林水産省を選ばれた経緯をお聞かせいただけますか
登山やスキーが好きで、長野には子どもの頃から何度も家族で訪れていました。だから就職を控えた時に、慣れ親しんだ「自然」や「田舎」を自分の子どもや孫の世代に残したい、そのために地域を元気にする仕事がしたいと考えて選んだのが農林水産省でした。
でも、農水省での業務は制度や法律に関するものが多く、本来やりたかったことができていないと感じていたんです。同時に気がついたのが、農業の「業」は「industry」であり、ビジネス≠ニして生産者や地域を豊かにしなければならないということ。そこで、アメリカでMBAを取得したのち、コンサルティング会社に転職しました。
農業と直接関わってはいませんでしたが、クライアントの課題に対する解決策を提示し、結果を出す仕事には、やりがいを感じていました。でも、その間も登山やスキーはずっと好きで白馬には毎冬通っていたし、学生時代からの夢を持ち続けていたんです。

ーーその頃から白馬を再興したいという思いがあったのでしょうか
日本のスキー人口は90年頃をピークに減少し続け、今は最盛期の3分の1。バブル崩壊の痛手を負った業界の一つです。これだけ良質な雪と素晴らしい景観を有しながら、地元の人たちに元気がないと感じていて、「これまでの経験を自分の好きなフィールドで生かすなら今だ」と入社を決めたんです。


■地域の声からビジョンを描き共に形にする

ーー話題を集めている新施設のアイデアはどのように生まれたのでしょうか
共に新企画に取り組むメンバーは、ほとんどが白馬を熟知する地元育ち。営業時間外にリフトで頂上に登っては、みんなで「白馬の魅力をどう打ち出すか」を夜な夜な考えました。みんな「なんとかしたい」と思っているから、たくさんアイデアが出てくるんです。「白馬つがいけWOW!」や「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」も「マウンテンバイクの聖地と呼ばれた白馬を復活させたい」「頂上にテラスをつくりたい」という彼らの声がきっかけ。そうした声を吸い上げ、資金面や外部交渉などを通して、アイデアに味付けするのが私の仕事です。

ーーかなり短期間で成果を出されていますね
スキー人口は減少しても山の大きさは変わらない、人を呼ぶために施設を刷新しようにも資金がないという悪循環が続く中、リスクを伴ったとしても最初のアクションはスピーディに行わなければという危機感がありました。最初に始めたのが、冬季を除くグリーンシーズン≠フ魅力を知ってもらうこと。そのために飲食施設は欠かせません。そこで、シティベーカリーさんやスターバックスさんに企画を持ち込み、粘り強い交渉の末、出店することができたんです。

ーー地域の皆さんを巻き込んでの改革はどのように進めたのでしょうか
最初にビジョンを共有し、課題を見える化して解決策とキャッシュフローを分かりやすく丁寧に説明する。あとは、とにかく打ち手を実行しながら、一つずつ結果を出して納得してもらうしかありません。幸い、開業後1カ月で前年同月の5倍となる3万人強と、来場者数は順調に伸びていますが、リフトをはじめ20年以上前の施設の入れ替えなど、本当の改革はこれからです。
立地上、宿泊施設の充実も急務。ただ、当社の仕事はあくまで索道事業です。地元の人たちが嫌がることはしたくないし、お互いの立場や事業領域は守りつつ、老朽化や後継者不足などの課題を抱える地元の宿を再生したいと考えています。 

■自分が夢中になれるものを見つけてほしい

ーー現在の生き方に影響を与えた幼少期や学生時代の経験、ご両親の教えはありますか
あまり自覚はありませんが、その時々で自分に必要なことを自分で考え判断し、行動してきたことでしょうか。例えば、部活動や受験勉強もそう。中高時代は、勉強だけではだめだと考えて、野球部での部活動に全力を注ぎました。夢中になりすぎて、気づけば大学受験まで8ヶ月(笑)。いかに効率的に勉強するか自分なりに計画を立てました。
あとは親父の背中です。人や社会に貢献する仕事をしたいと考えるようになったのは、厚生省に勤めていた父の影響かもしれません。自分の子どもには、そんなふうに見てもらえませんが(笑)。

ーー学生時代に経験しておくべきことや学んでおくべきことはありますか?
全力で打ち込める、好きなことを見つけてほしい。私の場合、大好きな「自然」が働く姿勢にも影響を与えています。大自然のなかでは、自分の限界を痛感することがたくさんある。そうした経験が、「自分の限界を知り人と協力する」という考え方につながっているかもしれません。
また、学生時代に打ち込んだチームスポーツからも多くを学びました。大学のアメフト部では、対戦チームの分析から試合の組み立てまで自分たちで考えていたのですが、その過程で大切なのは、プレーヤーの一人でありながら全体をふ瞰すること。具体≠ニ抽象≠行き来しながら物事を進める姿勢はこの頃身についたように思います。

■地域と自然を守るエコシステムをつくる

ーーでは最後に、これからの夢をお聞かせください
白馬を世界で10本の指に入るマウンテンリゾート≠ノすること。私たちがつくろうとしているのは、スキー場ではなくマウンテンリゾートです。この違いを例えるなら「海水浴場」と「ビーチリゾート」。海水浴場は泳ぐ場所ですが、ビーチリゾートはビーチでくつろいだり街で食事を楽しんだりして非日常感≠楽しむイメージですよね。同様に、登山やスキーはもちろん、美しい山々に囲まれて心身ともにリラックスしてほしいんです。
白馬は、街と圧倒的な自然が近い希少な土地であり、日本の宝物。地域が元気でなければこの自然も守れません。今はインバウンドの力を借りていますが、最終的には日本のため、次世代のために地域と自然を守るエコシステムをつくりたいと思っています。


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