関塾ひらく「インタビュー」 各界で活躍する著名人に教育や経営をテーマとしたお話を伺いました。
セント レジス ホテル 大阪 総支配人 石原哲也氏
お客様に喜んでいただくために常に考えて行動する
 
Profile
1964年大阪府豊中市生まれ。1987年にヒルトン東京に入社し、宴会部門のサービス、セールスアカウントエグゼクティブとして活躍。その後、ホテル日航デュッセルドルフ(ドイツ)、ホテルロイヤル台北(台湾)など海外での勤務を経て2001年に帰国。スターウッドグループのシェラトン札幌ホテル副総支配人、05年にはウェスティン都ホテル京都の総支配人を務めた。 10年にセントレジス ブランド史上 初の日本人総支配人として着任。


最高級のサービスを提供する「セント レジス」ブランド。
その日本進出として注目を集めるセント レジス ホテル大阪の総支配人に石原哲也氏は着任されました。
石原氏の考えるサービスと従業員教育の秘けつについてお話をうかがいました。


海外で見えた人生の目標


“セント レジス ホテル 大阪の総支配人”と呼ばれると格式張ったイメージがあるかもしれませんが、特別なことはありません。
自分で言うのもなんですが、私は中学時代まで真面目に勉強し、成績も優秀でした。しかし、高校入学後は授業を受けず、好きなことばかりしていて、ほとんど家には帰りませんでした。将来は大学進学せず働くつもりでいましたが、当時大学生だった兄から「働くのは大学を出てからでも遅くない」とアドバイスされ、進学を決めました。
人生に転機が訪れたのは、大学3年の夏。友人と出かけたシンガポール旅行でした。言葉も通じない未知の世界に衝撃を受け、海外に関わる仕事に就こうと考えました。それがホテル業界に入ることになったきっかけです。
ヒルトン東京に入社してから約3年間、ウェーターとして働いていました。そんなあるとき、「営業に来ないか」という誘いを受けたのです。
あと少しでウェーターの責任者の立場に就けるところまで来ていましたので、はじめは悩みました。しかし、自分がなぜこの仕事を選んだのかという原点に戻って考えたとき、「海外と関わりたい」という目標を思い出し、やはり海外で仕事ができるチャンスがほしいと思ったのです。ですから、営業の道を選ぶことに迷いはなかったです。人生にはさまざまな岐路がありますが、ゴールや夢を明確に持つことで自分が進むべき方向を決める判断基準になることをこのときに学びました。


百年続くおもてなしの精神

「セント レジス」は最高級のサービスを提供するホテルとして制で応え、サポートします。
また、「天神祭のどんどこ船乗船体験」や「上方落語と船場ゆかりの料理ビュッフェ」など宿泊者に特別な体験を楽しんでいただくプログラム「アフィシアナード」を企画・開催し、大阪ならではのサービスや最高のおもてなしを演出しています。


喜んでもらいたいと思う気持ちが基本

私はこれまでさまざまなホテルで勤務してきましたが、開業に携わるのは初めてでしたので、楽しみと同時に実は不安がありました。
しかし、ブランドは変わっても、私自身の信念や精神といったサービスメンタリティは変わることはありません。
サービスに必要なことは、まず、「どうすればお客様に喜んでいただけるか」を考えることだと思っています。
そのためには、ただあいさつすることだけでは不十分です。常に何かをしようとする意識を持ち、お客様の会話や行動からアクションを起こそうとする姿勢こそがサービスだといえます。
例えば、お客様が「おめでとう」という会話をしていたなら、「記念日ですか」などとお声かけして、デザートやメインディッシュでサプライズを用意する。ちょっとした心のすき間を埋めることで最高の感動、喜びにつながると思います。
よく「先を読む」「言われる前にやる」などと言われますが、お客様が行動を起こす前に読み取るのは不可能です。しかし、言動をよく観察し、何かしようという気持ちを持っていれば、どうすれば喜んでいただけるかに気付くはずです。それがサービスの根本であり、究極であると考えています。


セント レジスが求めるサービスのスペシャリスト

セント レジス ホテル 大阪は利用されるお客様にとって身近な存在でありたい。その実現のためにホテルのスタッフに求められているのはエンターテインメント性であると考えています。自分たちがエンターテイナーとなってお客様を喜ばせることにスタッフ自身が喜びを感じられなければ仕事を続けていくことは難しいと思います。
また、目標に向かうために、スタッフ全員が同じベクトルを向いている必要があります。採用の際、私は全員と面接をして、このホテルが向かう方向性や精神を意識してもらうようにしています。
そこから個人によって違う常識の尺度を調整する。これは一人ひとり違っていますので、平均化するのは大変なことですが、組織をまとめていくには必要なことです。
私の座右の銘は「信賞必罰」。いいことはきちんと褒め、悪いことは悪いとはっきり言うことです。
誰かがミスをした場合は、その人に個人指導を行います。間違ったことを理解し、反省しなければまた同じことを繰り返すと考えられるからです。
なぜミスが起こったのかを徹底的に追究し、再発を防ぐことが大切です。
ただし、そのためにはきっちり「叱ること」が大切です。叱ることは誰にとってもしんどいことですし、できればやりたくないことですが、それでは会社としても育たない。ですから、スタッフの上に立つマネージャーがきちんと指導する役割を担うように教育していくことも必要なのです。
マネージャーがその部署を仕切るようにならなければ次のステップに進めませんし、自ら考えて行動しなければその下にいるスタッフは上司を尊敬しなくなり、ついていかなくなります。
私がスタッフを束ねる立場として日々心がけているのは、常に公平であること。これが簡単そうでなかなか難しい。そこで現場を見回る場合は、できる限りスタッフに直接声をかけます。スタッフの方からは話しかけにくいと思いますのでこちらから積極的に歩み寄るようにしています。
また、例えば企画を考える際、私の考えが市場のニーズからかけ離れていて、スタッフは真のニーズを知っていたとします。この場合、私とスタッフのコミュニケーションが取れていなければ話しづらい。ですから、日ごろからコミュニケーションを図るようにしているのです。もちろん、スタッフの考えが良いと思う場合はすぐに取り入れるようにもしていますよ。
こうして全員が同じベクトルを向き、個人指導によって一人ひとりのレベルアップを図ることがホテル全体を底上げとなり、サービスの質の向上につなげることができるのです。

夢に向かって努力する人材を育てる

私も昔、塾に通っていましたが、学校は勉強の基本となる部分、塾は勉強の楽しみを感じられるコツを教えてくれる場所という印象があります。
料理は隠し味をくわえることで、見た目にはわかりませんが、より味が引き立ちます。同じように学校とひと味違ったワンランク上の解き方が分かれば勉強の楽しさが伝わり、子どもたちもやる気を持って塾に通うと思います。
関塾の経営者の皆さんにお願いしたいことは、子どもたちが塾に通う価値を感じられる環境を作ってほしいということ。そして、私と同じように夢やゴールを持たせることです。その内容は途中で変わっても構わないので、夢に向かって努力することが、人生を選択する判断材料になることを教えていただきたいと思います。

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